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大会当日はどんよりとした曇り空。
雨になる可能性はあまり高くないらしいが、それでも気分は沈鬱である。
武者震いをするのはアンカーの部長と第一区めの副部長くらいなもので、皆ウォームアップする表情が硬い。
それも道理である。
駅伝というスポーツの特殊性だと思うが、大会に出場する機会そのものが少ないのだ。
絶対的に経験不足であるのは知れるところであり、それが大きな不安要素だ。
ましてや、雨なんて降られた日には相当のプレッシャーになりかねない。

第一走者のスタートまで、まだ一時間弱ある。
三十分前には各中継地点へ行かなければならない。
この大会の参加者全員にとって今が各自のチェックに一番忙しい時間帯だ。
「おい集まれ」
部長が、応援を含めて十数名いる部員全員に声を掛ける。
手招きすると、皆自然と円くなり、両隣のひとの肩に腕を預けた。
全員の視線を一身に受けながら、厳然と部長は言い放った。
「悔いが残るような走りをするんじゃねえぞ」
砕けた口調でありながら、その言葉は重い。
皆こくりと頷き、目配せしあった。

深く息を吸い込み、部長が雄雄しく叫ぶ。
「完走すっぞ!」
「おう!」
全員の声が、冬空に木霊した。



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